2009年8月30日日曜日

『ジェイン・オースティンの手紙』

1970年代までは、どの家にも状差しというものがあり、親兄弟、親戚、知人などから来た手紙が差し込まれていたと思う。電話料金は高く、よほどのことがない限り、長距離電話はしなかった。

いまや、世界中どこにでも、瞬時で届く電子メール、というものがある。相手がインターネットに接続できる環境にあることが前提だけれども。

ジェイン・オースティンの生きた時代には、当然、電子メールはおろか、電話すらなかった。彼女は、姉や兄、友人たちに膨大な手紙を書き、日常生活のこまごまとした事柄などを、伝えている。

それを読むのは、実に面白い。まるで、彼女の時代にともに生き、最近あった出来事を知らせてもらっているかのような錯覚を覚える。自分のものを含めた恋愛、結婚、病気、死別、その合間に、シャツを縫ったり、ドレスを注文したり、帽子につける飾りについてあれこれ悩んだり。

まとまった小説ではないのに、これほど面白い書簡集は、読んだことがない。

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