2014年6月7日土曜日

猫サンクチュアリ年代記 10:父と息子あるいはカンパパとカンジ


猫サンクチュアリの周囲には、飼い主のいない猫たちに食事を与えてくれる家が何件かある。カンパパやカンジもそういう家でご飯を食べて生き抜いてきた。カンパパは礼儀正しい猫で、そういう家の人たちに評判がよかった。

カンジは私がはじめて会った時、二歳にもなっていなかったと思う。白地に黒トラの大きな水玉模様を乗せたような毛皮の、おとなしい雄猫だった。2005年の夏あたりから大猫サンクチュアリに来てご飯を食べるようになったが、2006年の8月ころから、雪と一緒に駐車場に移動した。

駐車場の雪に会いに、夜仕事が終わってから行くと、たいていカンジが一緒だった。二人は一緒にご飯を食べるほど親しかったようだ。カンジもまた、疥癬にかかったようだが、あまり人になれていなかったので、薬をあげることはできなかった。

2007年の1月に雪が大猫サンクチュアリに戻った時、カンジは一緒ではなかった。その後、カンジにあったことはない。

カンパパは、カンジにそっくりの大人の猫で、2006年の春あたりからよく会うようになった。大猫サンクチュアリに食事に来なかったとき、帰りに会うと、その場でご飯をあげていた。

カンパパは、晩年、何回も疥癬にかかり、そのたびに猫おばさんの一人が薬を上げていたようだ。2006年の12月のはじめ、給食の帰りにMさんに会うと、カンパパが十字路で寝ていて車に引かれた、と教えてくれた。

カンパパは非常に賢い猫だった。死ぬつもりがなければそんなところで寝るはずがない。しかも昼間に。なぜ彼が自殺したのかはわからないが。

アスファルトの道路の上に残された、乾いた小さな血の染み。今はもう何もない。

カンジがいなくなったのとほぼ同じ時期にカンパパも死んだ。何か関係があったのだろうか。

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