2014年7月26日土曜日

猫サンクチュアリ年代記 17:怒りっぽいザブ


2010年2月に小雪が死んで、大猫サンクチュアリには、大黒丸とソックスだけが残された。ご飯を食べにくるが、そのうちいなくなる猫たちはいたが、発情期のたびに冒険に出て、帰ってこなかった猫が多い。猫の事情、猫おばさんたちの事情で、去勢できなかったのは残念だ。

小学校の裏門の、小猫サンクチュアリはどうなっただろうか。

マリ、ステラ、リシュリュー、ルイがいなくなった小猫サンクチュアリだが、黄一郎、トミー、コゼット、ザブがその主なメンバーで、中でもザブは、私が給食を始める前からそこにいた古株の雌猫だ。

ザブは、給食場所の横にある白い二階建ての家の庭に住んでいたが、その家の飼い猫ではなかったそうだ。黒と茶色とそのほかの色がごちゃごちゃに混ざった模様の猫で、非常に怒りっぽかった。愛想もよくなかった。

ザブは、ドライフードより、缶詰とドライフードを半々にまぜた、缶詰ご飯が大好きで、器に入れるのに手間取ると、時々つめで引っかかれた。

病気で具合が悪いようには見えなかったが、2007年8月を最後にいなくなった。

ザブのいなくなった小猫サンクチュアリは、句点のない文章のように、しまりがなくなったように思えた。


2014年7月19日土曜日

猫サンクチュアリ年代記 16:一人遊びが好きな小雪


小雪は雪の娘だ。2002年にはもう、雪と一緒に大猫サンクチュアリにいた。白い部分の多い白黒猫で、非常に美しく、シャイと言うより一人でいるのが好きな猫だった。誰もいなくなった夕方の猫サンクチュアリで、走ったり木に登ったり、自転車のかごに飛びついたり、中で寝転んだりして遊んでいた。

母親の雪との絆は意外に強く、雪が大迫害を逃れて近くの自動車用駐車場に避難していたときも、後を追ってやってきた。そのころ私は雪を含めて小雪、カンジの三匹の猫に、毎晩ご飯を運んでいた。盛大に歓迎の声を上げる雪のはるか後ろに、小雪の姿がいつもあった。

雪と同様、ほかにも人間の友達がいたのだろうか、数ヶ月姿を見ないことがあったが、ある日、自転車置き場の奥のほうを小雪が歩いているのを見かけたので、安心したことがある。

小雪もまた賢い猫だった。冬の寒い夕方、自転車置き場の植え込みにある背の低い街灯の上に座り、手足を温めていた。蛍光灯なのでそんなに暖かくはなかっただろうが。

雪が死んだのは2009年の7月だった。クロードがいなくなったのも2009年の夏だ。

それから約半年後、2010年の2月1日、小雪は動物病院で死んだ。2009年の秋、病気で倒れていたのをNさんが救助し、自宅に連れて帰り、病院で治療を受けていたのだ。ある種のがんだったそうだ。何回か入院し、何回か猫サンクチュアリに脱走したそうだ。

最後は病院の、乾いた暖かいベッドで死んだのだが、それは彼女にとってせめてもの救いだと思う。

夕方の猫サンクチュアリで今も一人遊んでいる猫、それが小雪だ。


2014年7月12日土曜日

猫サンクチュアリ年代記 15:スカートをはいた雪


雪は白黒猫の雌で、2002年にはすでに猫サンクチュアリにいた。避妊する以前に生んだ娘の小雪がいた。避妊前は梅太郎とカップルで、小雪は彼らの娘だろう、とMさんが教えてくれた。

黒の多い白黒猫で、頭から尻尾の先まで、黒い毛皮に覆われていたが、尻尾の付け根辺りに白い筋が入り、まるでスカートをはいているようだった。顔は、鼻から下は白く、胸も腹も、手足の先も真っ白だった。

彼女は非常に賢い猫だった。私がいつも給食の後、ケーキ屋兼喫茶店で休憩しているのを知り、それで、時々、ケーキ屋まで探しに来るようになった。入り口のガラス戸越しに中を覗いているのだ。

彼女はまた、社交的な猫で、私たちのほかにも、人間の友達が複数いるようだった。梅太郎が死んだあと、駐車場に避難している間、私以外に、彼女に毎晩缶詰を運んでいる中年の男性もいた。駐車場の近くにも、彼女のなじみの家があるらしかった。

彼女は、大迫害以前にも、時々、一ヶ月くらいの単位で姿を消すことがあったが、それを知って以来、心配するのをやめた。

一番印象に残っているのは、雨上がり、私のかさの周りをぐるぐる回って遊んでいる、雪の姿だ。

雪もまた、私には不死身に思えた。ずっと猫サンクチュアリで生き続けるような錯覚が私にはあった。

だが、2009年2月から、さっぱり姿を見なくなった。いつもの放浪かと思ったが、6月になっても姿を現さなかった。ようやく7月18日、給食の時間に現れた。だが顔に生気がなく、何も食べなかった。後で、別れをつげに来たのだ、とわかった。


2014年7月5日土曜日

猫サンクチュアリ年代記 14:やさしい黒猫、クロード


大猫サンクチュアリの第一世代が、ジロー、シロー、梅太郎、雪だとすると、第二世代は大黒丸、ソックス、クロード、歌麿、アンナ、小雪、第三世代は黒雪とちびサスケだ。

第二世代には黒猫が二匹いた。クロードと大黒丸だ。だが、まったくタイプが違った。クロードは、尻尾の長いほっそりした黒猫で、雌猫のように美しく、おとなしい猫だった。一方、大黒丸は、尻尾は短く、いかつい体格で、押しが強く、やきもち焼きだ。

クロードは、大黒丸よりも遅く、2004年の秋ころに、猫サンクチュアリに現れた。そして、2005年の春に、歌麿や小猫サンクチュアリのトミーと一緒に虚勢手術を受けた。

Mさんが、クロードはおとなしいから去勢しなくても大丈夫じゃないかしら、と言うくらい、おとなしかった。それでも、去勢したほうがけんかの回数が圧倒的に減るし、場所を移動しなくなり、生き残れる確率が高くなるのだ。

クロードは、なんとなく小雪と仲がよさそうだった。目立たないようにだが、小雪のそばにいることが多かったからだ。

2005年の暮れに始まった大迫害時代を生き延びたクロードだったが、2009年7月を最後に、姿を見なくなった。猫サンクチュアリの近くに住む家の人によると、その夏、子猫を二匹保護したのだが、その子猫の様子を毎日見に来ていたそうだ。

クロードはどこに行ったのだろう。